だから、彼女は振り向かない。



「私は大丈夫よ」
 そんな言葉、もう誰も信じやしない。
 青ざめた顔で、本当は倒れてしまいたいだろうに、仲間達を置いていくかのように先頭に立ってパッセージリングから去っていく少女の後ろ姿を見て、ガイは唇を噛みしめる。

 もっと弱くていいはずの少女だった。

 あんなに産まれるのが楽しみだった。
 産まれたら、色々なことを教えてあげようと思っていた。
 もし男の子だったら僕が剣を教えてあげようとか、女の子だったら僕が守ってあげるんだとか。
 きっとヴァンデステルカは、弟だろうと妹だろうと厳しいだろうから、もし怒られたら僕が慰めてやるんだとか。
 
 滑稽だ。
 容易く手にはいるはずの未来はあまりに無造作につみ取られてしまった。
 守られて大事にされて、大切に大切に育てられたはずの少女は、たった一人の護り手であった兄を討つために命を削って戦っている。
 フェンデと言う名の揺りかごを、産まれる前から奪われて。


「……メシュティアリカ……」


 ごめんと言ったら少女は怒るから言わない。
 だから、こんなに胸が苦しいのだ。


ガイティアが好きというか、なんだろう。ティアと誰かという組み合わせが好きなのかも知れない。だって、あの子めんこいんだもの。