シンフェアに関する小話。



 一番忙しい時間帯を乗り越えて、あまったデザートを肴に、年頃の娘二人は食堂の椅子に腰掛けてだらだらだべって昼休みを満喫していた。

「ね〜、フェア」

「ん?」

「あんた達って結局どうなってんの?」

「どうなってるって?」

 ちょっと甘すぎたかなとプリンのカラメルを舐めつつ答える。

「だから、どうなってるのって聞いてるの」

「何の話よ」

 次は少し苦みを出してみよう。料理人モードに入っていたフェアは、話半分に頷いていた。だから次の言葉に吹き出した。

「シンゲンとあんた、何か進展とかあったかって聞いてるの」

「げほ」

「……もうちょっと女らしい咳き込み方できないの?」

「何いってんのよ、あんた」

「だぁって。いい加減何か楽しい話聞かせて貰いたいじゃん?」

「他人事だと思って……」

「で? 実際どうなのよ」

 人の非難などどこ吹く風で、リシェルはしれっと話を続ける。

「……だぁから」

「何よ。親友の私にまで秘密なわけ?」

「リシェル……」

「私が相談に乗ってあげようって言ってんじゃん。いいからとっとと吐きなさいよ」

 相談の強要など聞いたことがない。

「……だってさぁ。シンゲン私のことからかってるだけだよ」

「……あんた、この期に及んでよく言うわね」

 全てのもめ事が終わり、どうどうとプロポーズまでされ、今も熱烈アプローチを受けているというのに、まだ真に受けてさえいないのか。

「だってさ。リシェル」

 顔を寄せて囁く。つられるように、リシェルも身を乗り出した。

「正直、あの手の人がさ」

 シンゲンの飄々とした食えない笑顔を思い浮かべる。

「本気で、私みたいな小娘相手にすると思う?」

「…………ん〜」

 親友として否定してあげたいところだが、何とも言えない。

「ね?」

「うん、まぁ、ね。それも、そう、かなぁ」

 悲しいかな、汚れちまった大人の心境など理解できない清らかな乙女二人は二人して真剣に悩みこむ。

「でも、ほら、鬼妖界だと幼妻なんて当たり前なんでしょ?」

「それも、ほんとかどうか……」

「だったら、アカネとかセイロンとか居た時に聞いておけばよかったじゃない」

「……いや、そういう色恋沙汰に関して正直あの人達も信用できないって言うか……」

「……あぁ、まぁね」

 ぱっちりしたのが魅力的な瞳を半眼にして、視線をきまずげに逸らしながらフェアが言う。戦闘能力に関しては完全なる信頼を寄せているが、如何せんそういうことに対しては、あんまりあれだ。楽しくなるなら、なんでもしでかしそうな気配がする。すごくする。

「で、でも、結構真剣に口説いてるように見えるんだけどなぁ」

「そりゃ、私もドキドキすることあるけどさ。でも、私があたふたすると、急に顔崩して笑い出すしさ。私の態度見て遊んでるだけな気がする」

 それが与えて貰っている逃げ道だなんて、大人なりの配慮など、純粋無垢な子どもは気づかない。

「あ〜、確かにそういう所あるかもねぇ」

 そして、その少女の周りには酸いも甘いも噛みしめた系の導き手になれるような人がいなかった。身近な大人のセクターもミントも自分のことで手一杯だ。

「そしたら、やっぱさ? 本気になるの怖くない?」

「そうねぇ。それはあるかも」





 そんな乙女対談をこっそり柱の影で聞いてしまったルシアンは、ライバルにうっかり不憫になりつつも、積み重ねてきた人生に対する評価なわけだし、それはそれでいい気がしたというか、いい気味だった。



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別にラブラブってるのもいいんですが、こう何時までたっても信用して貰えないシンゲンとか面白くて好きです(面白いのかよ)(すごく)