best friend

 どれだけ戦闘が続こうと、それはそれ、これはこれ、仕事は仕事、宿屋は(基本)無休。
 どれだけきっついを戦闘を行ったとて、お客さんは知ったことじゃないし、働いてればお腹が空くし、というわけで今日も宿屋の食堂は満員だ(やったね)
「……づかれだ……」
 そしていつものごとく、戦場よりきついことすらあるお昼時を凌ぎきった店主のフェアはぐったりと机に突っ伏した。
「あんたさぁ。こんな時ぐらい閉めればいいじゃない、店」
 配膳の手伝いに来ていたリシェルもぐったりと隣に座ってぼやく。
「駄目だよ。こっちの勝手で店開けたり閉めたりしてたら、お客さんが来なくなっちゃう」
 信頼第一の職業だ。腹を空かして町外れまでせっかく来たのにしまってたじゃ、段々人が来なくなってしまう。
「……つっかれた」
 もしかしたら、世界の危機みたいな現状に立ち会っているというのに、米の残りが無いんだったと叫ぶ日々。どうも最近スケールの大きさを測りかねて困る。
 最後の水仕事を終えて、冷え切った指先を握って開いて感覚を取り戻そうとする。
「あ〜」
 ふと、自分の指先が水仕事で荒れていることに気がついた。皮膚がごわついている。手の平の方は剣だこで硬い。あんまり女の子らしい手とは言い難い。
「……あの子は、きっと綺麗な手をしてるんだろうな……」
 エニシア。
 甘い声、ふわふわした髪、優しい瞳。
 いろんな人に真綿でくるむように大事に大事にされて、どこか現実離れした、優しい綺麗な女の子。砂糖菓子みたいな、あの子。
 あの子は、きっと皆に大事にされて……。
 そこまで考えて、はっと我に返る。
 隣に座る、幼なじみの背中。
「ははっ」
 急に胸が温かくなって、フェアはその背中に自分の額を押しつけた。
「え? ちょっと、何?」
「ううん、なんでもなぁい」
「なんなのよぉ」
「なんでもないって」
 けらけら笑いながら、その額をぐりぐりと押しつける。
「ちょっと、フェア!」
「いいじゃん、ちょっとだけ」
 口で文句を言いながらも、そこに居続けてくれる大切な友達。
 
 大丈夫だった、忘れてた。私も大事にされていた。
 フェアは、ちょっとだけといいながら、リシェルに甘え続けた。






「や〜、仲睦まじくて、結構な事よのう」
「いやいや、全く」
「……駄目だ、こいつら」
 にやにやと緩んだ顔で戯れる二人を見守る鬼妖界の大人二人を、同じく鬼妖界の忍びは生温い目で見守るのだった。



鬼妖界の3人組が大好きです。