ビルの立ち並ぶオフィス街、昼は人にあふれ夜はそれぞれのねぐらに帰る。昼と夜別の顔を持つありふれたその街の一角。

「……またいるのか、お前」

「……まだやってたのか、お前」

 その二人は、そこにいた。

 

今日も、夜中に、あの場所で(仮題)







 男を見るなり少女は顔を歪めた。その少女の瞳には、呆れた顔の男が映っている。

「また残業か? 本庄」

「お前はまだこのバイト止めないのか、藤光常磐」

 一社丸ごと自社ビルだって言う、そこそこ立派な企業の8階の喫煙所で顔をあわせるのが常だった。

「よっぽど無能なんだな、お前。毎日毎日よくも残業できるもんだな」

 三角巾をかぶった女子高生、藤光常磐は綺麗な顔で素っ気無く言う。

「本当に無能なら残業するほど仕事を回してもらえないぞ。優秀だから仕事が寄ってくるんだ」

「ふん。手際の悪さを棚に上げてよく言う」

「お前は俺の仕事ぶりを見た事があるのか、馬鹿野郎が」

 慣れた手つきで掃除していく少女の姿を眺めながら、煙草に火をつけ本庄誉は一人ごちた。

「大体、ビルの清掃会社って花の女子高生が選ぶバイトかよ」

「時給がいいんだ、時給が お前は女子高生に変な幻想抱いてないか?」

「お前ね。俺は心配して言ってやってるのに」

「じゃあ私も心配して言ってやる。とっとと戻って仕事を終わらせろ」

 ソファに座ってくつろぐ男の足元をわざとモップで拭きながら常磐は嫌味っぽく言った。

「お前ね。こっちはお客様なんだから、もうちょっと愛想良くしたらどうだ?」

「私を雇ってるのは清掃会社で、清掃会社に金を払ってるのはお前の会社のトップだ。お前が私を雇ってるわけじゃない」

「俺が態度が悪いとかデータを盗まれたとかクレームつければ首にされると思うけど?」

 意地悪く目を細めて言う。だが常磐の答えは完結だった。

「それはない」

「どうして」

 常磐はさらりと言った。





「お前は、そんなことしない」

「…………」





「……どうした?」

 片手で顔を覆ってしまった男を常磐は不審げに見た。

「……いや、別に。何でも」

「……耳が赤いぞ」

「うるさいよ」

 これだから若いってのは怖いんだとぶつぶつ呟く男を常磐は不思議そうに見ていた。

「あー、うん」

 仕切りなおすように誉は咳払いをすると、ズボンの後ろからうウォレットをとりだすと千円札を一枚取り出した。

「おい、腹が減った。前の牛丼屋行って買って来い」

「はぁ……!?」

 常磐は殺気立つ。

「なんで私がお前のぱしりなんかやらなきゃならないんだ! バイト中だぞ!」

「いいだろ。近いんだから。バイト代ならだす」

「……いくらだ」

「牛丼一杯」

「……なんだ、それ」

「夕飯食ってないんだろ? 奢ってやるよ。釣りも駄賃でつけてやろう」

「……ふん」

 ひったくるように常盤は千円札を取ると、三角巾をとって誉に投げた。

「茶でも入れて待ってろ」

 言い捨てて踵を返し歩き出す。

「はいはい」

 誉は笑いつつ、その後姿を見送った。

 少しは楽しい夕餉が期待できそうだった。


まだ、タイトルが決まっていません。

桃絵につけた話です。現代エロリは難しい。