悪意の有無に関わらず、人間は他人のことを記憶する時、無意識のうちにコード化をほどこしたのちラベリングする。 

 明るい人、奇麗な人、頼もしい人。 

 それは重ねて言うが悪意のなすところではない。 

 だから彼がそういう認識をされているのだって決して悪意から来るものではないのだ。 





 不運な人。 





「フリックさんフリックさんフリックさん。」 

「……あ〜?」 

「大変! 大変なんです!!」 

「何がだよ。」 

 朝から元気なこの軍のリーダー、スズメの声にフリックは二日酔いの体を無理矢理起こして不機嫌そうな声音を隠さぬまま答えた。 

「あ〜、頭いてぇ。」 

 フリックは寝癖のついた頭をかき回しながらぼやいた。 

 昨日は、傭兵の砦にいた頃からの仲間が今度嫁をもらうことになったので、その祝いに一杯やっていたのだ。相手はミューズから逃げてきた女性らしい。幸せになって欲しいものだ。 

「何暢気なこと言ってるんですか。大変なんですってば。」 

「朝っぱらから大きな声を出さないでくれ。頭に響く。」 

「もう、太陽のぼりきってますよ。それより話を聞いてください。」 

「わかった。わかったから怒鳴るな。」 

 こめかみのあたりを押しつつおざなりに尋ねた。 

「で、なんだ? 何が大変だって?」 

「ナナミがカラスさんと出かけるって。」 

「…………あ?」 

「だからぁ。ナナミがカラスさんとデートするって言うんです。」 

「……おやすみ。」 

「ちょぉ! 寝ないで下さいよ!!」 

 再び布団をかぶり込んだフリックの体をスズメは上からゆさゆさ揺さぶらした。 

「もう少し寝かせてくれよ。今日久しぶりに休みなんだからよぉ。」 

「そういうこと言うとお給料減らしますよ。」 

「……大体なんで俺に言ってくるんだ、そんなこと。」 

 布団からかすかに顔を覗かせてフリックがどこか諦めつつ尋ねた。 

「何言ってるんですか。こんなことフリックさんにしか頼めないじゃないですか。」 

 スズメは何故か勝ち誇ったように、えへんといわんばかりに胸を張って答えた。 

「あぁあぁ、そうだな。そうだよな。そうだろうとも。」 

 その声はどう頑張ったってやけっぱちとしか表現の仕様がなかった。 



「で?」 

 一度スズメを追い出して顔を洗ったり髭をそったり髪をなおしたりと一通りの身支度を整えてから酒場で再びスズメに相対した。 

「今日本当は僕どうしても外せない用事があったんですよ。」 

「いいのか? その用事とやらに行かなくて。」 

「それでそのことをナナミに言ったんですよ。今日は一緒にご飯食べれないよって。」 

「……質問には答えてくれないかナァ。」 

「僕絶対ナナミ怒るか拗ねるかしちゃうと思ったんですよね。」 

「コミュニケーションってまずお互いに意思の疎通を図るところからはじめると思わないか?」 

「だけどナナミったらニコニコして『そっか、それじゃしょうがないよね。うん、頑張って』って言ったんですよ。」 

「っていうかお前、俺に相談するとか言っときながら自分ばっか話して俺の意見なんか聞きやしないだろうが。」 

「絶対おかしいと思いません? ナナミとのご飯よりシュウとの仕事を取ったっていうのに何も文句いわなかったんですよ?」 

「なぁ、なんか俺独り言いってるみたいじゃないか?」 

「だから僕おかしいと思って仕事行く振りしてナナミの後つけてみたんです。」 

「お前、自分の姉を信用できないのかよ。」 

「そしたら! いつの間にこっち来てたのか知りませんけどカラスさんがナナミとこっそりあってたんですよ。」 

「いや、別にこそこそしてたわけでもないと思うぞ? 大体にいちいちお前に許可取らないといけないのか? ナナミにあうのに。」 

「許せないと思いませんか? 僕と遊べなくて傷心のナナミの心の隙間につけこむなんて。」 

「お前カラスを一体なんだと思ってるんだ?」 

「というわけで! 僕はカラスさんがナナミに手を出さないように一日監視することに決めたんです!!」 

「……で、シュウとの約束はすっぽかした、と。」 

 この二人の会話が絡まっていないのはいつものことなので回りの人間も生暖かく見守っていた。 

「……シュウの奴も気の毒に。」 

 こんなのがリーダーでは奴の気苦労も絶えまい。 

「で、その二人は今何処にいるんだ?」 

「今はレストランでご飯を食べています。そのあとサウスウィンドウまで行くそうです。」 

「ふ〜ん。で、いいのか? お前は二人を見張ってないで。」 

「あぁ、それは……。」 

「おい。」 

「うおう。」 

 唐突に全く人の気配のなかった背後から声をかけられてフリックは思わず椅子から転げ落ちそうになった。 

「さ、サスケ?」 

 音もなくあらわれたのは少年忍者だった。 

「あの二人店を出るみたいだぞ?」 

「そ、ありがとう。じゃ、いこうか。」 

 立ち上がって酒場を出ようとするスズメに慌ててフリックが続き、その腕を掴んで耳打ちした。 

「……お前、私用に忍者の里の代表使うなよ。こんなことに使ったなんてばれて力貸してくれなくなったらどうするつもりだよ。」 

「大丈夫。手は打ってありますから。」 

「手?」 

 訝しげにフリックは尋ね返したが相手にせずサスケに向き直った。 

「ありがとう。助かったよ。」 

「いや……、別にいいけど……。……それより……。」 

 サスケは微かに頬を紅潮させて少し怒ったように俯きながら呟いた。 

「うん。わかってるよ。大丈夫、約束は守るよ。僕を信じて?」 

「……じゃ、俺いくから……。」 

「うん。ありがとねー。」 

 来たときと同じく音もなくサスケは去っていった。 

「……なぁ。」 

「何?」 

 フリックはその去って行った方をぼうっと見送りながらやはりぼうっとした口調で尋ねた。 

「……約束って?」 

「トランに行く時はパーティーにカスミさんを入れないこと。」 

「……いたいけな思春期の男の子の心を利用するなよ……。」 

 なんでこんなんがリーダーなんだろう。 

 フリックは頼もしいやら情けないやらで泣きたくなった。 

「ほら。行きますよ。」 

 それでもスズメが放っておいてくれるはずもなくフリックはずるずると引きずられていった。 





「ねぇ、カラスさん。これとかいいと思いません?」 

「うん。ナナミ好きそうだね。あ、これは?」 

「あ、かわいい。う〜ん。どっちにしようかナァ。カラスさんはどっちがいいと思います?」 

「そうだね。こっちの方がナナミらしいんじゃないかな。」 

「……落ち着け。落ち着くんだ、スズメ。」 

 仲睦まじく小物入れなどを見繕っているナナミとカラスを柱の影から盗み見ていたスズメをフリックは結構必死で押さえていた。 

「……チクショウ。僕がいないと思ってやりたい放題・……。」 

「一緒に買い物してるだけじゃねぇか。」 

 フリックはそれより周りの視線が気になる。 

 どちらかというと女の子向けの小物が置いてある雑貨屋で、そこにガタイのいい傭兵男は異様に目立つ。 

「……チクショウっていいたいのはこっちだ、ばかやろー。」 

 本人に言うと後が怖いので小さく呟いた。 

 そんな男たちの事情なんか全くしらずナナミは楽しげな笑みをカラスに惜しみなく見せていた。 

「あ〜、これ。これ可愛い。」 

「どれ?」 

「これ! 可愛くないですか?」 

 無邪気に首をかしげて、その陶器だろう小物入れをカラスに手渡した。 

「あぁ、そんなに近づいちゃだめだぁ、ナナミィ。」 

「……なぁ、あれ誰だか知ってるか?」 

 カラスも受け取って男に向けるのと比べて二割増しの優しい笑顔を浮かべている。 

「うん、キレイな色だね。結構いいものなんじゃないかな?」 

「あぁ、もー、近寄りすぎぃ。」 

「実はあれトランで一番強かった男なんだぞ? 知ってたか?」 

 ナナミが同意を得られて嬉しそうな笑顔を浮かべた。 

「これにしようかな。いくらだろ。……う。」 

 裏返してそこに貼られた値札にナナミの顔が強張った。 

「いくら? ……これはこれは。」 

「あー、顔っ! 顔ぉっ!!」 

「あー、腹減った。」 

 カラスが顔を近づけてその値段を見たことに焦っているスズメを見ながらフリックは今朝から何も食べてないことに気がついてしまって、自覚したら猛烈にお腹がすいてきてしまった。 

「ん〜、どうしよう。ちょっと高いなぁ。でもこれ欲しいナァ。」 

「……そんなに欲しい?」 

 ナナミはこくっと頷いた。 

「でもこんなにお金もってきてないんです。……仕方ない、か。他のにします。」 

「……僕が買ってあげようか?」 

「え?」 

「あー。物で、物で吊る気だ、あの人!」 

「この近くに飯食う場所あったっけ?」 

 フリックはなんだか投げやりにどうせ聞いてないであろうがスズメに尋ねてみた。もちろん返答など帰っては来なかったが。 

「これでいいんだね。」 

「あ、でも……。」 

 カラスはナナミの手からその小物入れを取り返して店の人に声をかけた。 

「すいません。これ下さい。」 

「あ、いいです。こっち。こっち下さい。」 

 その言葉を遮ってナナミが他の物を取り上げて店員に出した。スズメは心の中でだけいいぞナナミと呟く。 

「……これ欲しくないの?」 

「自分で買えます。」 

「だってこっちが欲しいんだろ?」 

「でもこっちでいいんです。」 

「・……あのぉ、私はどうすれば……。」 

 店員がどうすればいいのかわからずおずおずと声をかけた。 

「あ、そのままお願いします。」 

 カラスがなんだか有無を言わせない笑顔でいったので店員はそれを持っておくに引っ込んでしまった。 

「カラスさん!」 

「いいじゃない。たまには奢らせてよ。」 

「だけど……。」 

「いつも頑張ってるご褒美だよ。……プレゼントさせて?」 

「……でも。」 

 それでも我を張るナナミに少し笑いつつカラスは少女の頭の上にぽんと手を置いて少し腰をかがめて視線を合わせた。

「……ありがとうございます。」 

 ナナミは微かに頬を高潮させて嬉しそうに微笑んだ。 

「あぁ! 騙されちゃ駄目だ、ナナミィ!!」 

「あー、チクショウ。昨日奢ったからあまり金がねぇんだ。」 

「ちょっとフリックさん、真面目に考えてるんですか!?」 

「あ、俺のこと覚えてたんだ。」 

 結構本気で意外に思って感想を述べた。 

「ナナミがカラスさんにたぶらかされたらどうするつもりなんですが!」 

「いや、だからあれはトランの解放軍のリーダーのカラス・マクドールといってだな……。」 

 フリックがこめかみを掻きながらため息をついた。 

「……何でそんなにお前カラスが嫌いなんだ?」 

「別に嫌っちゃいませんよ。」 

「嘘つくな、嘘を。」 

「本当ですよ。」 

 心外と言ったていで息を吐いて腰に手をあてた。 

「別にカラスさんのこと嫌っちゃいませんよ、本当に。トランを解放しちゃった人ですからね。頼りにしますよ、ホント。」 

「の、割にしちゃ信用してないような気がするんだが?」 

「だってナナミに手を出すんだもん。」 

「…………。」 

 カラスがナナミに抱いているのは肉親に近い情と好奇心だろう。ナナミにしたってカラスに恋愛感情を持ってるとしたらかえって無防備すぎる。そんなことスズメにだってわかっているだろうに。 

「……別にナナミはカラスのこと兄貴みたいにしか思ってないと思う、ぞ……。」 

「…………。」 

 あぁ、そうか。フリックは言いながら何となくわかってしまった。 

 兄と、肉親のように思っているからこいつは不機嫌になるのだ。 

 例えば、ナナミが女として誰かを好きになったとして、いつかそいつの嫁になって、それでもスズメは弟であることに変わりはない。 

 でも、他に誰か兄のように慕う者があらわれてしまったら、そいつに自分の場所を追い出されてしまうのではないか。それがきっとこいつは怖いのだ。 

 それでも普通の姉弟だったらこんなに焦りはしないのだろう。だがこいつらに血の繋がりはない。だから怖い。カラスを認めれば認めるほど。 

 スズメを”弟”にしているのはただ一つ。精神的な絆でしかないのだ。 

 フリックは大きく息を吐いた。 

「あー、あのな、スズメ……。」 

 なんと言えばいいのだろう。上手く言葉にできないが。 

「……別に、スズメのこと気にかけてるのはナナミだけじゃないからな?」 

 何となく気恥ずかしかったので上を見ながらスズメの頭を軽く叩いた。 

「……何恥ずかしいこといってるんですか。」 

「うるせ。」 

 スズメは微かに頬を紅潮させながら照れかくしに生意気なことを言って、フリックはやはり恥ずかしくて、スズメの髪をぐちゃぐちゃにかき乱した。 

「うわぁ、何するんですかぁ。」 

「うるさい。人の言葉を素直に聞かないからだ。」 

「だからって、ちょ、止めてくださいよ。」 

「そうですよ、フリックさん。イタイイタイ。」 

「もー。髪ぐちゃぐちゃになっちゃったじゃないっですか。」 

「そういうことするとフリックさんのお給料勝手にビクトールさんのつけの支払いに回しちゃいますよぉ。」 

「…………。」 

「………………。」 

「ん? どうしたの? 二人とも。」 

「…………ねぇ、カラスさん。」 

「…………気配消して背後に立たないでくれるか?」 

 途中から割り込んできた楽しげな声がなんだか怖い。 

 いつの間にやらカラス・マクドールその人が立っていた。 

「あれ? スズメにフリックさん。こんな所でどうしたの?」 

 包んでもらった荷物を受け取ったナナミが少し送れて店の扉の所に現れた。 

「今日はずせない用事があったんじゃなかったっけ?」  

 二人の思惑など知らずナナミはにこやかに微笑んだ。 

「あ、うん。急に仕事なくなっちゃってね。で、暇だからフリックさんに買い物付き合ってくれなんて言われちゃってね・……。」 

 スズメがしどろもどろにナナミに言い訳してる最中フリックはカラスの服の袖を引っ張って小声で話し掛けた。 

「……いつから気がついてたんだよ。」 

「あの忍者君はまだ実戦では使わない方がいいかもしれないね。」 

「……最初から気がついてたのかよ。」 

 サスケの名誉の為に言っておくと決して技術的に不十分というのではなく、相手がカラスだということで監視するという以外の感情が強く出てしまったからなのだが。 

「なんだよ。なら声でもかけてくれればよかったじゃないか。カラスに姉ちゃん独占されて拗ねてたぞ、スズメ。」 

「うん。そうしようかとも思ったんだけどスズメの反応が面白くてね。」 

「……そうかよ。」 

「それに……。」 

 カラスは少し思い出し笑いをした。 

「なんだよ。」 

「んー、いや、なんでもない。……フリックも少し変わったね。」 

「……何も変わっちゃいないよ。」 

「じゃ、僕が気がついてなかっただけか。……かっこよかったじゃん、さっきの。」 

「……お前にも言ってやろうか?」 

「は?」 

 フリックはカラスに向かいなおってバンダナの上に手をぽんと置いた。 

「……お前のことを気にかけてるのだってグレミオだけじゃないからな。」 

「知ってるよ。パーンもクレオもいるからね。」 

「そーじゃなくて。」 

「……連絡くれなかったくせに。」 

「……悪かったってば。」 

 結局こうなるんだよなぁとか思いつつ目を閉じてため息をついた。 

「……前言撤回。」 

「あ?」 

「やっぱ変わってないよ、フリックは。」 

「悪かったな。青いままで。」 

「……優しいって言ってるんだよ。……ナナミ!」 

 右手の甲でフリックの腕を軽く叩きながら横を通り過ぎてナナミに声をかけた。 

「……あんま誉められた気がしねぇなぁ。」 

 フリックはぼやいて頭をかいた。 



「ところでナナミは何を買ってたの?」 

 帰り道、スズメは白々しく尋ねた。 

「ん〜。秘密。」 

「なんで。」 

 何を買ったのか知っていただけに慌てて尋ねた。何故いえない。 

「だってぇ。今日スズメ忙しいと思ったから買いにきたのに。意味なくなっちゃった。」 

「なんで僕には秘密なの?」 

 カラスさんとのデートだから? 

 スズメの声ならぬ声がフリックとカラスには聞こえた気がした。 

「いいんじゃない、ナナミ。こうなったら言っちゃってもさ。」 

「んー、そうですね。」 

 こうなったら? こうなったらって何? 

 なんだかフリックには心の動きが見て取れるようだった。 

「あのね。じゃーん。」 

 ナナミは嬉しそうにさっき包んでもらった小物入れを得意げに見せた。 

「……これが何?」 

「可愛いでしょ?」 

 包みから顔を出したのは両手におさまるぐらいの珊瑚の色をした可愛らしい陶器の入れ物だった。 

「うん。可愛いけど……。」 

「あのね。この前ヒルダさんにいい匂いのポプリわけてもらったの。疲れたときにリラックスできるんだって。」 

「……ナナミ。」 

 ナナミは少し照れくさそうに笑った。 

「……このごろスズメ疲れてたみたいだから。だからそれ入れる容器を探してたの。今日お仕事から帰って来た時にお披露目しようと思ったんだけどね。」 

「……ありがと。嬉しいよ。」 

 スズメは心のそこからの感謝を込めて微笑んだ。 





「ねぇ、今晩は一緒にご飯食べられる?」 

「うん。ハイ・ヨーさんの所に行こうか。……カラスさんも一緒に食べませんか?」 

 スズメからのお誘いにカラスは少し驚く。 

「……へぇ、君から誘われるとは思わなかった。」 

「今日のお礼です。いえ、嫌なら全然かまわないんですが全然。」 

「いや、お招きに預かるよ。」 

「さぁて、俺は酒場にでも行くかね。ったく、起きてから何も食ってないんだぞ。……ん?」 

 フリックは沈みかけた太陽に赤く染まった城門を見ながらぼやき、そこに見慣れた人影を見つけて足を止めた。 

「……お帰りなさいませ、スズメ殿。 

「げっ。シュウ。」 

 フリックは小さく呟いたがスズメは笑顔を崩さず応対してのけた。 

「ただいま。」 

「本日のご予定をお忘れでしたか?」 

「おや? 今日の予定は変更されたとフリックさんより伝言があったんだけど?」 

「は?」 

「おや、そんなことをつげた覚えはないのだが? ……フリック?」 

「言ってない、そんなこと言ってない。」 

「ゆっくりと話を聞かせてもらおうか? フリック。」 

「ち、ちがっ。おい、待てスズメ。どういうことだ、おい。」 

「ありがとう、フリックさん。あなたの尊い犠牲は忘れません。」 

「んー、ホント変わってないね、フリック。」 

「さ、ポプリ飾ってこよっと。」 

「いくぞ、フリック。」 

「おい、待て、濡れ衣だ。おい、誰か助けろーーーーーーー。」 



 もちろんシュウもフリックが主犯だと思っているわけではない。むしろとばっちりを喰らっているというのはよくわかっている。 

 では何故呼んだかと言えばもちろん八つ当たりをしてストレスを発揮する為だ。 

 そして彼は今日も呼ばれるのだ。親愛と多少の同情をこめて。 



 不運な人。 

 ……本当に悪意はないのだ。

 



from crazy*3