ぼくは、君の味方だ。

絶対に見捨てたりしない。





 その言葉は、まるで天上から降り注ぐ光のように。

 

 

 貴方がくれた光







「やばいやばいやばいやばい」

 のどかな昼下がりに一人、危機に陥っていた男がいた。

「どうしたの、ナルホドくん」

 真宵は出前で頼んだ味噌ラーメンを最後の一滴まですすってから聞いた。

「やばいんだよ、真宵ちゃん。今狩魔検事から連絡があって、被告に圧倒的に不利な証人の召喚に成功したって」

「……わざわざ連絡してくるなんて、本当にナルホドくんのこと負かしたくて仕方ないんだねぇ、狩魔検事」

「かんべんしてくれよ、ほんと」

「そんなにやばいの?」

「やばい」

「……ねぇ、ナルホドくん」

「ん?」

「どうしてナルホドくんのところには有利な被告人来ないんだろうねぇ」

「言うな! 気づいてたけど、気づいてたけど言葉にはしないで……!!」

「そういうのを無駄な足掻きって言うんだね」

「……ちくしょう、負けるな。負けるな、成歩堂。何時か報われる日だって来るさ」

「あ、自己暗示に入っちゃったよ」



 真宵はがっくりとテーブルに両腕をついた弁護士を見て呟いた。

 机の上は相変わらずとっ散らかっている。その中にばら撒かれた。被告人を助けるための、だけどその人を不利にしている証拠の数々。

 多分このままだったら有罪判決確定だろう。



「ここはあれだね、ナルホドくん」

「うん?」

「泣いて一つ土下座だよ。勘弁してください、冥様って」

「死んでもするもんか」

「じゃ、御剣検事にする?」

「世界が滅びても嫌だ」

「目が据わってるよ、ナルホドくん」

「真宵ちゃんが言ったんじゃないか!」

「人に当たるのは良くないよ」

「うるさい!」

 そう言って成歩堂は机の上の書類をもう一度漁りだした。そして手持ちの武器じゃ戦えないことを確認して再びがっくりと落ち込む。

「……で? どうするの?」

「……行くよ。絶対あるはずなんだ。真相に近づくための鍵が」

「うん、そうだね」

 諦めない人。真宵は微笑む。

「じゃあ、元気のでる一言を言ってあげよう」

「何それ」

「例え有罪に成ってもね。きっと依頼人はナルホド君を恨まないよ」

「なんでさ」

「だって無理だよ、ナルホドくん」

 寝不足で隈のできた目元に手を伸ばす。きょとんと目を見開いた人。





「そんなに全力で自分を信じてくれる人を、どうやったら恨めるの?」





 怖くて、本当に怖くて、孤独だった。

 無機的なあの部屋に一人にされると、何が正しいのかわからなくなる。

 悲しみを分かり合える人は与えられず、ただ内に籠り腐ってゆく。

 誰もがお前が犯人だろうと瞳で語る。

 実の姉を殺害するなどなんて非道な。迫害される。

 段々何が正しいのかわからなくなって、もしかしたら自分が本当に殺してしまったんじゃないかなんて本気で考えた。

 そんな時に、彼は与えてくれた。





「ぼくは、君の味方だ。絶対に見捨てたりしない」





 その言葉は、まるで天上から降り注ぐ光のように染みていった。

 貴方は多分知らないけど、貴方は確かに一人の人間の心を救ったのだ。

 だから。



「だから大丈夫だよ。何があっても真宵ちゃんはなるほど君の味方だから」

「そりゃどうも。だからラーメンおごれって?」

 疲れたようにため息をつきながらいった成歩堂に真宵は笑って答えた。

「あれ、なんでわかったの?」

「わからいでか」

「言い回しが年寄り臭いよ、なるほどくん」

「大きなお世話だよ!!」

「じゃ、いこっか」

「ラーメン屋に?」

「そうじゃなくて。行くんでしょ? 証拠探し」

「あ、うん」

 事務所の扉を開けながら言う少女に、呆気に取られたように成歩堂は答えた。

「いこう、なるほど君」

「……そうだね」

 気を取り直したように笑うと、成歩堂は背広を取って歩き出した。

 扉を開けて成歩堂を送り出してから自分も出て鍵を閉める。

「……大丈夫。何があっても私はなるほど君の味方だから」

「え? 何か言った?」

「ううん。なんにも。いこっ」

「あ、おい」



 青い背広の背中を押して駆け出す。

 日没には、まだ遠い。


古いファイル漁っていたら書きかけのが出てきたので仕上げました。逆転裁判の真宵ちゃん登場の回のあの言葉が本当に大好きです。

久々にナルマヨ。久々って言うか2つめか。楽しかったです。